ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
「だから僕、まいさん好きー」
「ハイハイ」

私よりデカイ図体をして、小さな子供みたいに無邪気に喜ぶ大地の頭を、なだめるようにポンポンと叩く。

ふと、大地と彼の母親を思った。
こういう風に甘えてくるところをみると、大地は幼い頃、母親から充分に、抱きしめられた経験がないのかもしれない。

大地の話してくれた昔話。
そこから伝わってきたのは、大地を『男』としてしかみていなかった母親という名の『女』でしかなくて。
あるはずの母性が、感じられなかった気がするからだ。

「──前にも、こうして抱きしめてもらったよね?
あの時も思ったことだけど……僕、まいさんのなかに『母親』をみているのかもしれない。
……エディプス・コンプレックスに近い感覚っていうのかな」
「え? エディ……なに?」
「エディプス・コンプレックス──息子が母親に対して性愛を抱くあまりに、父親を憎んでしまうことを心理学者のフロイトが表した言葉。

まぁ、僕の場合は憎むべき対象はいないから、厳密にいえば違うんだろうけど。
そういう……近親姦的な欲望を抱いてしまうってところが、なんだか符合してるなと思って」

顔を上げて、大地は私を見た。
少し自嘲的で、それでいて、うっとりと幸せをかみしめるような微笑みで。

「ねぇ、それって、姉弟間の情交より、ずっと罪深い感じがするね……」
「そう? どっちも、罪かどうかっていえば、たいていの宗教では罪でしょ」
「うーん……。
肉体的には姉弟姦で、精神的には母子姦っていうのは、より重い気がする」

身を起こして、大地は頬づえをつく。ちらりと私を見た。
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