ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
父さんは麦茶に、バカみたいに氷を入れて欲しがる。
ファミレスで飲む、フリードリンク並みに薄まってしまうだろう麦茶のグラスを、父さんの前に置く。

「はい。……私、席を外した方がいい?」

なんとなくそんな気がして訊いたのだけど、父さんは首を振った。

私は、大地の座るソファーの隣に、腰を下ろした。

カラカラと音を立てて、父さんが麦茶をごくりと飲みこんだ。
大きく息をついてから、思いきったように口を開く。

「ずっと……二人には詳しい事情を話さずにいて、済まなかったと思う。
なかなか、話を切り出すタイミングが、つかめなくてな。
だが、今日、聡子義姉(ねえ)さんが来たというなら……私の話を聞いてもらいたい」

意思を確認するように、代わる代わる、私と大地を見つめる。
それから、視線を宙に定め、両手の指を組んだ。短く、息をつく。

「───私が、大地くんのお母さん……亜由美(あゆみ)さんと知り合ったのは、彼女が当時勤めていたスナックに、同僚と飲みに行った時だった。

きれいな子だな、というのが第一印象だった。
甘えるのが上手で……でも、金品を欲しがってねだるような感じではなくて……そう、愛情に飢えているような女性(ひと)だった。

一人で生きていけなさそうな、か弱い女性にみえて放っておけなくて……そうこうするうちに、男女の仲になった。
……母さんと……祥子と正反対の彼女に、惹かれてしまったんだ」

───ひとくちだけ、麦茶を飲んだ。
注いでから大分経った氷の入らない麦茶は、生ぬるくなっていた。

私の隣で大地は、身動(みじろ)ぎもせずに、父さんの話を聞いていた。
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