ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
わずかに窓を開けると、うるさいくらいに、秋の虫達の大合唱が入りこんできた。それ以外は、何も聞こえてこなかった。

エンジンを切って、助手席の大地を見る。

「うん。僕は……それでも、まいさんの弟でいたい」

嘘のない瞳。
後悔も罪悪感も、そこからは伝わってこない。
ただ愛おしむような穏やかな微笑を浮かべ、大地は私を見つめ返してきた。

そんな風に私を見て、なのに、なんて罪深い告白をするんだろう。
───ヤな奴……。

きゅっと唇をひき結ぶ。

───父さんがDNA鑑定をもちだしたことによって、気づかされたことがある。

私は……大地との血縁関係を、無意識下で否定していた。

姉弟でなければ、大地に対していだく恋情や情欲を、素直に肯定できるからだ。

でも、姉弟である以上、今まで……二十九年間生きてきた中での社会規範や一般的な倫理観からぬけだして、肯定的に二人の関係を受け入れることなんて、できなかった。

だからこそ私は、大地との血の繋がりを無意識のうちに否定して、その事実にふれることなく……向き合うことなく、恋愛関係を結んでいられたのかもしれない。

一緒に育つことも暮らすこともなかっただけに、たやすくそんなごまかしができたのだ……。

「でもね」

黙ったままでいる私の手を、大地が握ってきた。

───こんな気分の時に、触らないでよ、ばか。
理性でいくら否定しても、感情が……心が、大地を求めてしまっているのが解って、つらいんだから。
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