ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
「……舞美。父さん、どうやら定期を───」

ガチャリと開いた玄関扉。
動きが止まったのは、私と大地だけではなく、父さんも一緒だった……。

一番最初に口を開いたのは、大地だった。

「えぇと……黙っててごめんなさい。僕、まいさんのこと、好きなんです」

困ったように、けれども大地は、笑って父さんに向き直った。

なんで、この状況で笑えるかな……。

「あー……えーと……そうか。
いや……舞美。父さんはだな、ててて定期入れを……定期入れを忘れてしまったんだが。
……あー……とりあえず、すまないが、見なかったことにさせてくれ。理解に苦しむ。
いや、何が起こったのか、分からなくてだな……あぁ、遅刻してしまうかな、もう……」

下駄箱の上に、靴べらと一緒に置いてあったパスケースを見つけ、父さんに差し出す。

「───父さん。はい、これ。行ってらっしゃい」
「……行ってきます」

パスケースを受け取って、父さんはふらふらと玄関のドアを開け、出て行った。
大地が、あわててあとを追いかけようとする。

「僕、お父さんが心配だから、ちゃんと正気を取り戻すまで、ついて行くよ。だから、まいさんは心配しないで!」
「あー、うん……よろしくね。あんたも、気をつけて。行ってらっしゃい」
「行ってきます」

言い残して去って行く大地の背中を見送りながら、今夜、父さんにどうやって、大地とのことを話そうかと考える。
< 98 / 115 >

この作品をシェア

pagetop