一途な後輩に、秘密に溺愛されてます。



咲菜は、いつもより覇気のない声で小さく呟く私に驚くこともせず、のんびりとした様子で頬杖をついた。


「んー…私もわかんないや亅
 

「え?亅


にこ、と微笑んだ彼女の反応は思ったものと違って、私は目を見張る。

でも咲菜の笑顔は、誰よりも幸せそうで。

 

「“好き”ってさ、私の中で漠然としたものって感じがするんだよね亅


何が好き、どこが好き、ってよりも、心に大きく占める感情。



「恋奈は、さっきどう思ったの?亅


「え、?」


「一瞬で誰かが頭に思い浮かばなかった?」


「…それ、は」



言葉がつまる。

思い浮かんだ人なんて、一人しかいない。


…でも私が人を好きになる資格は、ないのかも。



「私は、恋奈が“好きだ”って思うなら、その人のことを思い続けてほしいなあ」


「ーー…」



自分が好きだと思ったら、好きでいい。


< 100 / 131 >

この作品をシェア

pagetop