一途な後輩に、秘密に溺愛されてます。

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「ーー……ふぅ」



呼吸を整えて、まっすぐに目の前にある的だけを見つめる。


ギリ、と流れるように、弓を引けば後は吸い込まれるように手を放すだけ。




ーート、と静かな音が道場に広がる。



すると、隣から「すげー」と感嘆の声。



「やっぱりセンパイ、弓上手いですね」


「当然よ」



実は私の家ーー美澄は、代々弓道の家元。


幼い頃から、私は弓道一筋でやってきたのだ。それなりにプライドがあるし、他の人に負けるわけにはいかない。



……まあ、始めは部活で家元だし、才能があるのは当然だって思われていたけど。もう今は気にしていない。自分が努力していれば、それでいい。



「少しやれば出来る」なんて人、そうそういない。それこそ才能だ。




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