100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
中部国際空港もゴーアラウンド――機体が揺れて着陸をやり直す他機の情報が無線から流れてきた。
張り詰めた空気が流れるコックピットで、五十嵐の隣で操縦桿を握っているのは御子柴だ。
チラッと横目でこちらを見た御子柴が、クッと笑う。
「いつも通り、すかした顔をしていろよ」
緊張をほぐそうという意図はわかるので、反論はしない。
「これほどの悪条件が重なることがあるのですね」
ダイバードの経験は数回あるが、変更先の空港でも着陸が難しいのは初めてだ。
「これほど? 俺に言わせればこの程度だよ」
御子柴の総フライト時間は五十嵐の倍以上で、軽い口調だが、その言葉には重みがある。
迷惑に絡んでくる上司を、この時ばかりは心から頼もしく感じた。
おかげで緊張を緩められた時、管制から無線で呼びかけられる。
『Skyairrise700 runway36 cleared to land. Wind300 at 20』
「runway36 cleared to land. Skyairrise700. キャプテン、着陸許可が出ました。風速二十五ノットです」
「視界は百メートルだとよ。滑走路がほとんど見えず、風も強め。よし、頑張れ。応援しているぞ。ユーハブ」
操縦を代わろうとしている御子柴を信じられない思いで見た。
これほどの悪天候の日はオートマチックでの着陸は行えない。
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