100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
「聞いてほしいことがあるんです。でも時間がないので、のちほどお願いします」
(さあ、楽しい仕事の始まりだ)
運航整備部の管理棟から出ると、滑走路に向かってくる他社のエアバス機が上空に見えた。
五十嵐との契約についてはいったん頭の隅によけ、仕事モードに気持ちを切り替える。
愛する航空機が待っていると思うと胸が高鳴り、やる気に瞳が輝いた。

忙しさを楽しみ夢中で整備をしていると、あっという間に昼休みになる。
今日は早めの十一時半からの昼休憩で、管理棟の一階にある社員食堂で浅見と隣合って座った。
五列の長テーブルに向かい合わせの椅子が六十ほど並んでいて、作業着姿の整備士ばかり二十人ほどが定食やカレーライス、麺類などを食べていた。
混んでくるのはこれからだろう。
和葉はアジフライ定食で、浅見は冷やしたぬきうどんとお握りを食べている。
揚げたてサクサクのフライに、酸味がほどよく効いたタルタルソースをたっぷりとつけて頬張りながら、昨日ランウェイで五十嵐に会った話をした。
「五十嵐さんもあの店の客だったのか。知らなかった」
「たぶん二度目です。一度目も偶然に会ったんですけど、間違えて来店したようでした。飛行機マニアの店だと知って嫌そうだったのに、なぜかまた来たんですよね」
「金城がいるのを期待して?」
「まさか、それはないです」
即答で否定したが、その可能性もあると思い直して頬が熱くなった。
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