100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
(でも、ひと晩お世話になったから、もう契約がスタートしている。今さらなかったことにとは言えない。だから絶対に惚れないようにしよう。愛されていないのに結婚は無理。それなら〝コーパイに捨てられた女〟と呼ばれる方を選ぶ)
好きでもないのにフラれたと言われるのも、なかなか悔しいが。
ヒソヒソと話しているうちに食堂は満席になった。
壁際で席が空くのを待っている整備士と目が合い、和葉は急いで立ち上がる。
「出ましょう。浅見さんに話したのは、お世話になっているので一番先に報告しなければと思ったからです」
「俺の意見は求めていないという意味か。考えを変える気がないのはわかった。金城は頑固だからな」
仕事中の和葉は自分の意見をはっきり主張する。
先輩や上司が違う考えだった場合もそうで、納得するまで引き下がらない。
それは黄色いヘルメットをかぶっていた時からだ。
結局は先輩の意見が正しかったという場合も多々あるけれど、生意気だと思われようともこの姿勢は今後も貫く。
ライン整備は航空機が飛び立つ前の最後の砦。
乗客乗員の命を預かっているのはパイロットだけでなく、自分もだと信じている。
そんな和葉の性格をよく知っている浅見が、諦めたようにため息をついた。
「どうなっても知らないぞ」
(見放された?)
浅見だから詳細まで正直に話したのだが、女避けについてまで言うべきではなかったと首をすくめた。

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