100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
退勤して高級マンションに帰り着いたのは十八時頃だ。
まずは汗でべとつく体をシャワーでさっぱりと洗い流し、部屋着のTシャツとショートパンツに着替えた。
五十嵐の退勤時間は聞いていないが、出勤がゆっくりの日はきっと帰宅も遅いだろう。
不規則勤務の彼とは食事時間が合わないので、各自で用意するという話を昨夜した。
一緒に乗務した機長から誘われて外食することもよくあるそうだ。
クーラーが心地よく効いた部屋で、実家から送られてきたソーキそばをひとり分だけ茹でる。
四人掛けのダイニングテーブルで食べながら、きょろきょろと周囲を見回した。
(広くて静か。ひとりだと落ち着かない)
大家族で育ったため、誰かがそばにいた方が安心できる。
ひとり暮らしの狭いアパートは壁が薄く隣や階下の住人の気配が感じられ、ここまで静かなことはなかった。
(五十嵐さん、早く帰ってこないかな……)
心細いと帰宅が待ち遠しい。
急ぐ必要はないのにかき込むように食べて、和葉の部屋として借りている八畳の洋間に移動する。
アパートから持ってきた布団や小さな座卓を見ると、少しだけホッとした。
この家の間取りは2LDKだ。リビングとこの部屋の他に五十嵐の寝室があり、六畳のウォークインクローゼットや広いバルコニーもある。
次の休みの日に家電などの大きなものを運んで、完全に引っ越そうと考えていた。
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