100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
嘆息した彼がリビングへと向かい、和葉も部屋の電気を消してあとに続いた。
疲れているだけかもしれないけれど、なんとなく困り事があるように感じた。
婚約の噂の広め方について相談したかったが、彼の話を優先したほうがよさそうだ。
ソファに並んで座ると、渋い顔をした彼が話しだす。
「同じ便に乗務したキャビンクルーから、和葉と婚約して同棲しているという噂は本当かと聞かれたんだ」
「えっ」
「言ったのか?」
非難するような目で見られ、慌てて首を横に振る。
「CAさんには言っていません」
「には? 誰に話した?」
お世話になっている浅見にだけ、昼休みに話したと教えた。
口止めはしていないが、浅見から噂は広まらないだろう。
五十嵐に好意を寄せる女性たちからの嫌がらせを心配されたほどである。
「CAさんは誰から聞いたんだろう……あっ、社員食堂が原因かもしれないです」
浅見に報告した時、驚いたため大きな声で反応されてしまった。
それ以降は声を落としてくれたが、周囲の誰かが聞き耳を立てていたのかもしれない。
その整備士からCAの耳に入るまでに何人か介している可能性もあり、噂の拡大はもう始まっているようだ。
(さすが注目度ナンバーワンの五十嵐さんだ。噂の広め方の相談はいらなかったみたい)
「お前からは誰にも話すなと今夜言うつもりだったのだが、遅かったか」
額を押さえた彼に目を瞬かせる。
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