100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています

「私、女避けになるんでしたよね？　婚約した話を広めないと盾になれませんよ？」
それとも、噂の広まり方が気に食わないのだろうか。
なにが問題なのかわからない和葉に、眉根を寄せた彼が仕方ないと言いたげに白状する。
「婚約を隠すつもりだった。女性社員からの好意を迷惑に感じているのは本当だが、そのくらいは自分で対処できる。女避けの盾にして、お前になにかあったら困るだろ」
「それなら、どうして取引を持ちかけたんですか？」
「俺の援助を素直に受けないからだ」
ストーカーに知られているアパートに帰すわけにいかないが、引っ越し費用の無償援助やルームシェアの提案を『彼女でもないのに』という理由で断られた。
それで和葉から返せるものがあるだろうかと考え、女避けを思いついたそうだ。
婚約については必要最低限の人に報告したということにして、実際は誰にも話さず、和葉には盾として役立っていると言うつもりだったらしい。
（なによ、それ……）
動揺して鼓動が加速し、五十嵐の顔をまともに見られない。
（ストーカーに襲われたら困るから、取引したふりをして無償援助？　嫉妬が向いたら困るから、女避けにする気はなかった？　私にしかメリットがない。私のこと、大事にしすぎでしょう）
意地悪な人だと思っていた方がまだ心中穏やかでいられただろう。
気に入っているという程度の想いで、そこまでできるものかと疑問に思う。