【完】恋情を拗らせた幼なじみ社長は、訳アリ令嬢を執愛している。
「こちらのお部屋が本日のお席になっております」
「ありがとう」
私は奥の席に案内され、されるままに席に座る。
そういえば、相手のことを何一つ聞いていない!
「ねぇ、お父様。お相手は――」
そう言いかけるとドアがノックされて「お連れ様がいらっしゃいました」とウェイターさんの声が聞こえてすぐお父様が返事をしたのでドアが開く。
すると、長身の男性が入ってきた。スーツはオーダーメイドだとわかる上質なものだとわかる。
それに眉目秀麗で顔立ちは美しく爽やかな美青年という感じで……どこかで見たことある気がするんだけど、どこだろう。
「……碧くん、久しぶりだね」
「はい。宝月社長……お久しぶりです」
お父様に『碧』と呼ばれていてわかってしまった。
彼は、旧富萊財閥家の御曹司であり次期社長と呼ばれている人で昔大好きだった兄のような存在の幼なじみだった。
「……久しぶりだね、麗ちゃん」
あの頃と変わらぬ優しい表情は、思い出すには充分だった。