日々も続けば恋となる。
ピピピピッという、
ウザったいアラームの音で目が覚めた。

重い体を起こし、1つアクビをする。

嫌な夢……。

もうあれから何年経ったか。
2年……いや、3年。

桜を一緒に見たあの日、彼女にフラれた。

元々俺は、
本気で結花が好きだったわけじゃない。
ただ、居心地がよかっただけ。

未練なんて全く無い。

なのにたまに、アイツが俺の夢に出てくる。


「ん〜……しゆー…もう起きるのぉ?」


心底気持ちの悪い猫なで声が隣から聞こえ、
目を向けた。

素っ裸の女が目を擦りながら起き上がる。


「腹減った。帰るわ」
「朝ご飯くらいなら作るよ?」
「人の手作り無理」
「ふーん。……ふわぁ…ねむーい」


わざとらしくアクビをして、
俺に寄りかかってくるその女に俺は、
昨日告られ、付き合うことになった。

彼女はこれで何人目だっけ。

長続きはしない。早い時は2日で別れる。



「夜の志優、まじ優秀すぎぃ……。
私まだ体力回復してないわ〜」
「じゃあ寝てろ。俺は帰る」


乱暴に床に投げ捨てられていた服を拾い、
さっさと着た。

私物を持ち、忘れ物がないか確認してから、
この女の家を出た。

ウザイくらいに晴れ渡った空。
ふわふわと舞い散る桜。

桜を見る度、思い出すのは結花のこと。

……1番長続きしたのは、結花とだったな。
まぁ、言うて1年半だったけど、




「志優くん?」



──鈴の音が鳴るような、その、声。

恐る恐る振り返ると、
そこには──結花がいた。



「志優くんだよね?わぁ、すごい久しぶりだ。
また身長伸びたね。
なんか大人っぽくなってるし」



あの時と変わらぬ笑顔で、
俺に接してくる結花。

なんで、そんな普通なんだろう。

俺を、フッたくせに。
今更、なんなんだよ。



「結花、会いたかった……」



気づいたら、俺は結花を抱き締めていた。

何年経っても、あんな、
くだらない日常を思い出してしまうのは、
結花が好きだからなのだろう。
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