日々も続けば恋となる。
「離してっ」


小さな拒絶の声が聞こえたと思えば、
結花は俺の手から逃れ、
俺をキリッと睨みつけた。



「志優くんは今もまだ、
なんで私が志優くんをフッたか
わかってない」
「結花……?」
「……急に話しかけてごめん。ばいばい」
「結花っ」



名前を呼んでも、もう振り返ってはくれない。
笑いかけてはくれない。

なんで、なんで……。

俺は走って結花を追いかけた。



「待って結花!」



結花の手首を掴み、引き止めると
結花は驚いたような顔をして
こちらを見た。



「俺、結花が……結花が、好き……だ」
「っ……」
「お願い。あと1回でいいから、
チャンスがほしい」



俺はどうしても、結花と一緒にいたい。
ずっと、ずっとそばにいたい。

くだらないあの日常が
どれほど幸せなものだったか、
やっとわかったんだ。

人の手作りは苦手だけど、
結花の作ったものは喜んで食べるし、

結花が落ち込んでる時は
俺が笑わせる。

今度こそ、大切にするから。
だから、戻ってきてほしい。



「……なんで、香水の匂いがするの?
その首に付いてる跡は何?

どうして今更、好きだなんて言うの。
前は言ってくれなかったくせに。

志優くんは、変わってないね。

変わらなくていいって言ったのは
私なのに、ありのままの志優くんを
愛せなくなってた。

ワガママでごめん。

……私も、大好きだったよ」



俺に背を向け歩き出した結花を
もう一度引き止めることはできなかった。

もっと早く、
好きだと気づいていればよかった。

もっとたくさん、
好きだと言っていればよかった。


この先も、"結花"という存在は、
永遠に俺の頭の片隅に
居続けるのだろうと思った。




「……戻るか」




俺は来た道を戻って行った。






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