イケメンカリスマ美容師の沼は思った以上に深そうです
「お待たせしました。シャンプー、こちらですよね?」
快永さんが戻ってくると彼女は再びウキウキとした声で話しかけ、会計を済ませて店を出ていった。
台風みたいな女性だったな。あとに残された私は彼に微笑みかけられた途端、心にダメージを受けていることにはたと気づいた。
「待たせちゃって本当にごめんね」
快永さんが両手を合わせて申し訳なさそうに謝る姿を見ると、先ほど受けた罵詈雑言のダメージが不思議とどこかに飛んでいってしまう。
私という人間はどこまでも単純にできているらしい。
「いえ。私は全然大丈夫なので」
「えっと、次回の予約を取るんだったよね」
「あの! シャンプー……」
「ん?」
気がつくと私はパソコン画面に再び視線を向ける彼の言葉をさえぎっていた。
カウンターの台の上へ遠慮がちに両手を乗せて、内側にいる快永さんとの距離をできるだけ詰めて近寄る。
「さっきの女性が買っていったシャンプー、私も買います」
そんな予定はまったくなかったのに、たった今、思いつきで購入を決めた。いわゆる衝動買いだ。
じっと見つめ続けていると、一瞬考え込むような顔をした彼と目が合った。
「ありがとう。でも……無理しなくて大丈夫だよ?」
「全然無理なんてしていません! せっかく素敵な髪色にしてもらったから、できるだけケアしたいんです。取り寄せてください」
「そっか。……実は隠し持ってる在庫がひとつだけあるんだ。ちょっと待ってて」
ひとり分ずつ注文するごとに取り寄せているから、在庫なんて置いていないはずなのに。
私が購入してしまってもいいのだろうか。落ち着かない気持ちで待っていると、シャンプーを手にした彼がすぐに戻ってきた。
「このシャンプーはカラー後の色持ちがいいんだ。艶も出る。手触りのよさも保証する」
快永さんお墨付きのシャンプーなら、どんなものでも使ってみたい。
髪を労わって美しさを保つ。そんな小さなことでも気分が上がると教えてくれたのは彼だから。
快永さんが戻ってくると彼女は再びウキウキとした声で話しかけ、会計を済ませて店を出ていった。
台風みたいな女性だったな。あとに残された私は彼に微笑みかけられた途端、心にダメージを受けていることにはたと気づいた。
「待たせちゃって本当にごめんね」
快永さんが両手を合わせて申し訳なさそうに謝る姿を見ると、先ほど受けた罵詈雑言のダメージが不思議とどこかに飛んでいってしまう。
私という人間はどこまでも単純にできているらしい。
「いえ。私は全然大丈夫なので」
「えっと、次回の予約を取るんだったよね」
「あの! シャンプー……」
「ん?」
気がつくと私はパソコン画面に再び視線を向ける彼の言葉をさえぎっていた。
カウンターの台の上へ遠慮がちに両手を乗せて、内側にいる快永さんとの距離をできるだけ詰めて近寄る。
「さっきの女性が買っていったシャンプー、私も買います」
そんな予定はまったくなかったのに、たった今、思いつきで購入を決めた。いわゆる衝動買いだ。
じっと見つめ続けていると、一瞬考え込むような顔をした彼と目が合った。
「ありがとう。でも……無理しなくて大丈夫だよ?」
「全然無理なんてしていません! せっかく素敵な髪色にしてもらったから、できるだけケアしたいんです。取り寄せてください」
「そっか。……実は隠し持ってる在庫がひとつだけあるんだ。ちょっと待ってて」
ひとり分ずつ注文するごとに取り寄せているから、在庫なんて置いていないはずなのに。
私が購入してしまってもいいのだろうか。落ち着かない気持ちで待っていると、シャンプーを手にした彼がすぐに戻ってきた。
「このシャンプーはカラー後の色持ちがいいんだ。艶も出る。手触りのよさも保証する」
快永さんお墨付きのシャンプーなら、どんなものでも使ってみたい。
髪を労わって美しさを保つ。そんな小さなことでも気分が上がると教えてくれたのは彼だから。