妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
第一章 手ひどい裏切り
まったく熱のない冷たい瞳が円香を真っ直ぐに捉えている。少しも逸らされない視線に、心の奥底まで見透かされているような気がして円香は落ち着かない。
二人のいるこの場所が円香のホームであるとはいえ、冷酷無慈悲と噂される男と二人きりの状況。知らず緊張が走る。
円香が警戒心からわずかに後ずされば、目の前の男は円香のほうへと一歩詰め寄った。
そして、噂に違わぬ冷たい声音と表情で、今の円香に最も似つかわしくない言葉を容赦なく突きつける。
「俺と結婚しないか?」
その台詞にも、それを発したのが目の前の男であることにも、そして、それを自分に向けられていることにも円香は衝撃を受ける。
もしも見知らぬ誰かが、今のこの瞬間だけを切り取って見たならば、それは心を温かくするプロポーズの場面に見えたかもしれない。けれど、実際には円香の心の温度は上昇するどころか、氷点下まで下がっていく。
何しろこの状況の背景には苦くつらい出来事があるのだ。
円香はこんなにも心が冷えるプロポーズを受けている自分がひどく惨めで滑稽に思えてならない。正面の男にも嘲笑われているような気になる。
円香にとってはもはやすべてが悲劇でしかないが、円香に平然とこんなことを口にするこの男にとってはすべて喜劇なのかもしれない。
二人のいるこの場所が円香のホームであるとはいえ、冷酷無慈悲と噂される男と二人きりの状況。知らず緊張が走る。
円香が警戒心からわずかに後ずされば、目の前の男は円香のほうへと一歩詰め寄った。
そして、噂に違わぬ冷たい声音と表情で、今の円香に最も似つかわしくない言葉を容赦なく突きつける。
「俺と結婚しないか?」
その台詞にも、それを発したのが目の前の男であることにも、そして、それを自分に向けられていることにも円香は衝撃を受ける。
もしも見知らぬ誰かが、今のこの瞬間だけを切り取って見たならば、それは心を温かくするプロポーズの場面に見えたかもしれない。けれど、実際には円香の心の温度は上昇するどころか、氷点下まで下がっていく。
何しろこの状況の背景には苦くつらい出来事があるのだ。
円香はこんなにも心が冷えるプロポーズを受けている自分がひどく惨めで滑稽に思えてならない。正面の男にも嘲笑われているような気になる。
円香にとってはもはやすべてが悲劇でしかないが、円香に平然とこんなことを口にするこの男にとってはすべて喜劇なのかもしれない。