妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
 少し大胆になれたその一日があったおかげか、二人の仲はより一層親密になっていく。

 二人の間の会話はぐんと増え、休日のデートはもちろんのこと、平日に彰史が外食に誘ってくれることも多くなった。

 今日も彰史にどこかで食事をしようと誘われ、円香は待ち合わせでお馴染みになったカフェへと赴く。

 そこは彰史の会社が入っているビルの一階にあって、周囲がガラス張りになっているから、仕事を終えた彰史をいち早く見つけることができる。


 円香は紅茶を飲みながら、彰史が出てくるであろう方向にちらちらと目を向けつつ、このあとのことに思いを馳せる。

 彰史との外食は、食事そのものだけではなくて、そのあとのやり取りに楽しみがある。

 彰史が気に入った料理を円香にリクエストしてくれるから、円香はそれを再現して彰史に振る舞うのが楽しいのだ。

 彰史がいろいろなところへ連れて行ってくれるから、円香の料理のレパートリーはどんどん増えていく。

 今日はどんな料理があるのだろう、彰史は何をリクエストするのだろう、なんてことを考えながら、ガラスの外を見ていれば、目的の人物が姿を現す。その姿が目に入っただけで、円香は自然と笑みをこぼす。

 紅茶を飲み干し、すぐに店を出る準備にかかるが、一度外した目線を彰史のほうへ戻したところで円香は固まってしまった。その顔から笑みは消え失せ、血の気すら引き始める。

「……どう、して?」
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