妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
「……本当?」
「本当だ。一度だって受け入れていない」

 彰史のはっきりとした物言いに、今すぐに彼の胸に飛び込んでしまいたいという気持ちが湧き上がる。

 けれど、どうしても一つだけ心に引っかかっていることがあって、それが円香を引き留める。今日の二人のあの場面が円香の頭から離れないのだ。

「……麗香ちゃんが彰史さんに抱きついてて、彰史さんの手も麗香ちゃんの腕に添えられてたから、もしかしたらって」

 円香のその言葉に、彰史は一瞬不思議そうな顔をして、考える素振りを見せる。しかし、それはほんの一瞬のことで、すぐに何やら納得したように小さく「あー」と呟いている。

「円香、俺に抱きついてみろ」
「え?」
「いいから。思いきり抱きついてみろ」

 彰史に腕を引かれて、彼の背に腕を回すような格好になる。彰史に「ほら」と催促されて、円香は半信半疑ながらも腕の力を少しずつ強めてみる。

 すると、彰史は円香の腕を掴んで、円香のことを思いきり自身から引き離してしまった。
< 114 / 201 >

この作品をシェア

pagetop