妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました～入れ替え婚!?～

「っ！？　なんで？」
「あのときはこのくらいの力で引き剥がそうとしていた」
「あ……」

　彰史に拒絶されたと悲しくなった円香だが、彰史の言葉ですぐに真実が見えてくる。

　今のは、円香の心に引っかかっているあの場面を再現してくれたのだ。円香を拒絶したわけではない。

　そして、彰史が示してくれたその真実は、円香の見たあの光景が、円香の想像とはまるで異なるのだと教えてくれる。

　彰史はかなりの力で押し返していた。それほど麗香が強く彰史に抱きついていたということなのだろう。

　麗香のその行動には怒りを覚えるものの、彰史が受け入れたわけではないとわかれば、陰鬱な気持ちは晴れていく。

「俺があんな女に触れたいと思うわけがない。俺が触れたいと思うのは円香だ」

　彰史は円香を引き寄せ、今度はしっかりと抱きしめる。

　その優しくて強い抱擁と、彰史から漏れた「俺を信じろ」という絞り出すような声に、円香はやっとすべての警戒を解く。身も心も彼に預ける。

「信じる。彰史さんのこと信じます」
「ありがとう、円香」

　しっかりと抱きしめ合えば、服越しに彰史のぬくもりが少しずつ伝わってきて、円香は安心から来る涙を流す。