妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
 円香が満足するまで続いた抱擁は、円香が腕の力を弱めたことで終わりを迎える。

 ゆっくりと体を離せば、自然と二人の目が合うが、先ほどまで甘えた行動を取っていたせいか、目を合わせるのがどうにも恥ずかしい。

 円香が照れくささから、視線を合わせたり外したりを繰り返していれば、彰史はくすりと笑いをこぼして、円香の頭を優しく撫でてくれる。

「俺たちの家に一緒に帰ってくれるか?」
「はい。帰ります。彰史さんと一緒に帰りたい」
「ん。なら、孝之助さんに挨拶をして出よう」

 二人は自然と手を繋いで、揃って客間を出た。


 孝之助を探して居間に行ってみれば、孝之助は一人で静かにお茶を飲んでいた。円香と彰史が一緒に現れても、特に大きな反応は見せない。

 孝之助には、こうなることが最初から予想できていたのかもしれない。

「孝之助さん、お騒がせして申し訳ありません。円香と一緒に帰ります」
「そうか。気をつけて帰りなさい。円香、よかったな」

 孝之助はとても優しい表情を浮かべている。何も言わなくても、二人が上手くいったとわかっているのだろう。

「うん。ありがとう、おじいちゃん」
「ああ。またいつでも来なさい」

 そうして円香と彰史は孝之助に見送られ、共に二人の暮らす家へと帰った。
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