妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました～入れ替え婚!?～

　帰宅し、久しぶりに彰史との穏やかな時間を過ごした円香は、夜になると強烈な眠気を覚えて、あくびを噛み殺しながら寝室へと入る。

　彰史はすでに自身のベッドに入っており、片肘をつきながらスマホをいじっている。

　しかし、円香の存在に気づくと、すぐにスマホを置いて、掛け布団をめくり、円香を呼び寄せる。

「円香。こっちに来い」

　とてつもない吸引力で引き寄せられる。円香はそこがとても居心地のいい場所だと知っている。ましてや彰史を好きだと自覚した今、その誘いを断れるはずがない。

　自分のベッドには見向きもせず、真っ直ぐに彰史のベッドへと歩み寄る。

　手が触れられるほどの距離まで近寄れば、彰史に強い力で抱き寄せられる。

　そうして彰史の腕の中にぎゅっと閉じ込められれば、円香の胸は強く高鳴る。

「眠そうだな。今日はしっかり寝ろよ。もうちゃんと眠れるだろ？」
「はい。ほっとしたら、急に眠気が襲ってきました」
「ん、よく寝ろ。ここ最近の円香は随分と顔色が悪くて、見ていられなかったからな」
「心配かけて、ごめんなさい」

　円香がしゅんとして謝れば、彰史に「まったくだ」と軽く額を小突かれる。

「ごめんなさい……あの日のお食事のことも本当にごめんなさい。せっかく誘ってくださったのに」
「それはもう気にしなくていい。食事くらいいつでも行ける。そうだろ？」

　相変わらず優しい彰史に、円香は微笑みを浮かべて、「うん」と返事をする。

　この人は本当にいつだって優しくて温かい。

　円香は、彰史のぬくもりを確かめるように彼の胸元へとすり寄る。

「温かい。彰史さんはとても温かいですね。冷たいだなんて嘘。本当に温かい」

　円香から漏れ出たその台詞に、彰史は特に何も言わないが、円香を温めるようにしっかりとその腕で包み込んでくれる。彰史のその行動に彰史への想いが込み上げる。

　麗香のことはまだ完全には解決していないから、すべての不安が拭われたわけではない。それでも、彰史が裏切っていないとわかった今は、そのことは頭の片隅に追いやって、彰史のぬくもりだけを味わう。

　今はただ愛しい人との時間を慈しむ。それがとても尊いものであると円香はよく理解しているから。