妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました～入れ替え婚!?～

　あの二人が現れたのは、円香たちの到着から十五分ほどが経った頃であった。子供は両親に預け、すぐに円香たちのほうへと近づく。

「お姉ちゃん、久しぶり」

　麗香は悪びれた様子もなく、笑顔で話しかけてくる。たぶん、悪いことをしている自覚がないのだろう。にこにこと笑いながら、円香の前に遠慮なく座ってくる。

　一方の円香は複雑な思いにかられて、苦い表情になる。麗香に向かって「久しぶり」と吐き出した声も随分と暗いものになった。

　それは円香を裏切ったもう一人の人物がいることにも起因しているだろう。

　麗香から少し遅れてテーブルへと近づいた朔也は、さすがに円香に対しての罪悪感があるのか、眉を下げて申し訳なさそうな表情をしている。彼は席へ着く前に深々と頭を下げてきたから、円香への謝罪の気持ちがあるのは間違いないだろう。

　だが、今日の本題はそのことではないから、朔也は何も言わずに静かに麗香の隣へと腰を下ろす。そして、朔也が席へと着けば、麗香がこの場にそぐわぬ明るい声で話しはじめた。