妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
「みんな何暗い顔してるの? 今日は最高におめでたい日なのに。だって、彰史さん、やっとわかってくれたんでしょ? お姉ちゃんもありがとうね」

 麗香は彰史が自分を受け入れてくれるのだと勘違いしているらしい。この状況でそんな思考を持てることがもはや恐ろしい。

 麗香の明るくて前向きな性格は彼女のいいところだが、そこに思いやりの心がなければ、ただの自分本位で身勝手な人間でしかない。

 麗香が少しでも円香のことを考えてくれているなら、『ありがとう』なんて言葉が出るはずないのだ。

 あまりにも円香を蔑ろにしている麗香の発言に、円香は表情を歪めて顔を俯ける。胸が苦しくて、それに耐えるように膝の上で強く手を握りしめる。

 すると、隣に座る彰史がそっと円香の手へ自分の手を重ね、そのまま優しく手を握ってきた。

 彰史のその行動に、円香がハッと顔を跳ね上げて、彰史に目を向けてみれば、俺がついていると言わんばかりの強く優しい瞳に出くわす。

 円香は思いだす。一人ではないのだと。最強の味方がすぐそばにいるのだと。

 彰史に背中を押され、円香は真っ直ぐに麗香を見つめ返す。
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