妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
第六章 語らい
 いつもならば集中して取り組んでいるはずのデッサンに、円香はちっとも集中できない。少し描いては止まり、また少し描いては止まる。描きたくないわけでも、描けないわけでもないのだが、横からの視線が円香の手を止める。

「彰史さん、そんなにじっと見られると恥ずかしいです……」
「こうしてときどき観察しておかないと、円香は逃げてしまうだろ?」

 負い目のあることを理由にされて、円香はひるむが、だからといって素直に受け入れられるわけでもない。

「っ……それはもうしませんから。何かあったらちゃんと話します」
「そうしてくれ。だが、前科者の言うことだからなあ」

 その言い方は卑怯だ。円香に反論の余地がない。

「そんな……それじゃあ、私はどうにもできないじゃないですか……」
「気にしなければいい」
「無理です……」

 円香は視線で彰史に訴えかけるが、彰史は愉快そうに微笑むばかり。本当にやめてくれと円香が少し表情を強めてみても、彰史は意に介さず、それどころか円香の頬に手を添え、そのまま口づけてくる。
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