妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
「こういうの? キスをか?」
「キスというか、触れ合い? を」
「触れ合い? ……あー、言われてみれば、円香が初めてだな」
「初めて?」
「ああ。こんなふうに過ごすのは君が初めてだ。以前は、セックス以外で触れ合うのはあまり好まなかったからな」
「……それならどうして?」
「円香といると落ち着くんだ。円香の周りの空気はゆったりしていて、それが心地いい。円香に触れて、その心地よさをもっと確かめたくなる」

 トクンと胸が音を立てる。好きな人に、自分といるのが心地いいと言われて喜ばない人がいるだろうか。少なくとも円香は嬉しい。

 いじわるなことを言われていたのなんか忘れて、素直な言葉をこぼしてしまう。

「……私も、とても心地いいです。彰史さんと過ごすのは、好き」
「ふっ、そうか。だったら、こうして触れても問題ないだろ?」
「……はい」

 円香が同意すると共に、もう一度口づけが降ってくる。ただ触れ合わせるだけの優しい口づけだが、唇が離れるたびに二人の目が合って、それが円香を高まらせる。

「円香」

 至近距離で名を呼ばれ、円香の瞳は熱を帯びる。甘く彼を見つめて続きを期待するが、なぜか彰史は少しの距離を保って、次の口づけをくれない。

「……彰史さん」

 待ちきれずに彰史の名を呼べば、ようやく二人の距離が縮まるが、触れ合ったのは唇ではなくて、なぜか額。そして、その距離のまま、彰史は口づけはお預けにして、唐突に会話を始める。
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