妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
「あの、それは新婚旅行とは別にってことですよね?」
「そうだな。まあ、視察のついでだから、行き先は自由に選べないんだが、それでもよければ一緒に行こう。観光の時間くらいは取れるから」
「え、視察って、お仕事ってことですよね? 私が付いていくと邪魔になりませんか?」
「ならないから誘っている。それに仕事といっても、月花の資産管理の件だからな。別に円香がいても問題はない」

 円香はなるほどと頷く。

 そもそも彰史が円香と結婚したのは、資産管理の件があったからだ。彰史は月花家に入るために円香に求婚をしたのだ。

 しかし、彰史は家で一切そういう話をしないし、円香をちゃんと家族として扱ってくれるから、そんな事情なんて円香はすっかり忘れていた。

 どうやら円香が気づかなかっただけで、彰史はちゃんと月花家のことに関わっているらしい。

「そうなんですね。えっと、その視察というのはどこに?」
「九州だ。宮崎と大分にある不動産を直接見に行きたい」
「え? 九州にあるんですか?」
「ああ。知らなかったか?」
「はい。その辺のことはまったく」
「そうか。まあ、孝之助さんには円香の同行の許可は得ているから心配するな」

 円香を連れていく前提でいてくれたのだとわかり、円香は顔をほころばせる。

「ありがとうございます」
「うん。それで日程についてだが、俺は九月の連休で行けたらと思っている。実は、連休後に仕事が立て込みそうでな。俺の都合で申し訳ないが、連休で済ませてしまいたい。どうだ? 一緒に行くか?」

 こんなに嬉しい誘いを円香が断るはずない。円香は満面の笑みを浮かべ、大きく頷く。

「行きます。行きたいです!」
「ははっ、いい返事だ。一緒に行こう」

 斯くして、円香と彰史の初旅行が決まった。
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