妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
 円香は少しでも恥ずかしさを軽減させるため、彰史に先に湯の中へ入ってもらい、こちらを見ないでくれと釘を刺してから自分も湯に入る。しっかりと体を湯に沈めてから、ゆっくりと彰史のほうへ体を寄せ、触れるか触れないかの距離で止まる。

 円香がその距離のまま、コトンと頭を彰史の肩に乗せると、彰史は優しく肩を抱き寄せてくれた。

「気持ちいいな」
「うん、そうですね」
「とても贅沢な気分だ。自分の伴侶と温泉旅行を楽しむ日が来るなんて、想像もしていなかったからな。こんな贅沢を味わえるのは、君が結婚してくれたおかげだよ。ありがとう、円香」
「そんな。お礼を言うのは私のほうです。私が今幸せなのは、彰史さんがいてくれるおかげですから。本当にありがとうございます」
「ああ」

 二人はそのまましばらく無言で身を寄せ合う。相手に全幅の信頼を置いて身を預ける。そうすれば言葉を交わさずとも、互いに大事に想っていることが肌から伝わる。

 円香はじわじわと心が満たされていって、これまで誰にも言えなかった胸の内を自然とこぼしはじめた。
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