妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
「……私、自由な麗香ちゃんがずっと羨ましかったんです」
「それは意外だな」
「ですよね。でも、本当に羨ましかったんです。麗香ちゃんは、周りの目なんか気にしないで、自分の生きたいように生きていて、それが眩しかった。私はどうあるべきかばかりを考えていて、とてもつまらない人間だったから……」

 自分のことを卑下するつもりはないが、自分と正反対の麗香はとても魅力的に見えた。

 もちろん円香は自分の生き方を悪いとは思っていないし、その生き方で十分すぎるほどの幸せな日々も過ごしてきた。けれど、枠にはまった生き方しかできない自分をときどきもどかしくも思ったのだ。

「俺は円香をつまらない人間だとは思わないがな。周囲のことを考えられるのは、それだけ思いやりがある証拠だ」
「ふふ。やっぱり彰史さんは優しい。でも、本当に面白味のない人間だったと思うんです。だから……朔也くんも麗香ちゃんにって、そう思いました」

 朔也が円香ではなく麗香に相談をしていたのも、円香の堅苦しさ故だったのではないかと円香は思っている。お手本のような人生を歩もうとして、彼に窮屈さを与えてしまっていたのではないかと。

「それはどうだろうな。あの男からは後悔が滲み出ていた。浮気男の思考なんて俺にはわからないが、あの男はまだ君に気持ちがあるように見えたよ」
「それは……昔私と描いた未来に未練があるだけですよ。麗香ちゃんへの気持ちは間違いなくあるはずです。だって……好きでもない人となんて、彼にできるはずないから。長い時間を一緒に過ごしたから、わかるんです」
「……そうか」

 彰史に、つらく悲しい胸の内を明かしていると思わせてしまったのだろうか。彰史は円香を慰めるように、円香の頭に優しく触れてくる。

 だが、円香は慰めてほしくてこんな話をしているのではない。もっと前向きな気持ちで話している。

 円香はそれを伝えるために、さらなる胸の内を語っていく。
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