妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
「……私の相手だから、奪いたかった?」
「いや、その言い方は少し違うな。あれは君と同じになりたかったんだろう。円香に憧れるあまり、同じものを手にしたかったんじゃないか?」
「……私が麗香ちゃんを羨ましく思っていたみたいに、麗香ちゃんもってことですか?」
「俺にはそう見えた。まあ、理性を捨てなかった君と、そうじゃなかったあの女とでは、天と地ほどの差があるけどな」

 羨む気持ちなら円香にもわかる。だが、自分が憧れの対象になっているとは少しも思わなかった。円香がそのことに気づいていれば、もしかしたら違う未来もあったのかもしれない。

「……私がもっとうまく麗香ちゃんと関われていたら、誰も傷つかずに済んだんでしょうか」
「それは結果論だからな。正解はわからない。だが、家族を大切にしている君のことだから、妹のことも大切にしていたんだろ?」
「……はい」
「それに甘えて、己を顧みなかったのは、あの女の落ち度だ。円香のせいじゃない。子供ならともかく、大人ならそれを理解するだけの分別はあるはずだ。まあ、この間の席で、ようやく理解してはいたようだがな」

 麗香の傷ついた表情を思い出す。確かにあのときは、ちゃんと言葉が届いているように円香も感じた。

「そうですね……私とはこじれてしまいましたけど、新しい家族をちゃんと大切にして生きてくれたらなと思います」
「そうだな」

 少しだけ感傷的な気持ちになって、彰史に寄り添えば、彰史はまたしっかりと肩を抱いてくれる。
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