妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
「酒に酔ったあの男は、それまでとはまるで違っていて、母や俺へきつく当たるようになった。暴言や暴力は当たり前。母が稼いだ金を奪っては、さらに酒におぼれ、ギャンブルにまで手を出すようになった」

 あまりにひどい出来事に円香は強く顔を顰める。だが、想像よりもずっと厳しいその話を彰史は淡々と語っている。

「父のその状態は少しも治らなかったが、それでも母はまた昔のようになれると信じて、必死に働いていた。どれだけひどい仕打ちを受けても、家族だからと言って耐えていた。だが、そんな母をあの男は見捨てたんだ。別に女を作り、母に借金を背負わせ、行方をくらました」
「そんなっ」
「母は一人で泣いていたが、決して後ろは振り向かなかった。俺のことは自分が守ると言って、以前のように笑顔を絶やさず、それまで以上に働いていた」

 きっと彰史が裏切りに厳しい姿勢を見せるのは、父親のことがあったからなのだろう。そして、彰史の家族思いなところは母親からの影響に違いない。

 彰史の冷酷さも優しも、すべて彼が歩んできた人生が作り出しているのだ。
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