妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
「どう? あなたが足枷になってるってわかった?」

 円香は俯く。痛いほどにわかってしまった。彰史が優しいからこそ、明確になってしまった。円香の存在が彼を引き留めてしまっていると。

「あなたがいい決断をしてくれることを期待しているわ」

 相川に見送られ、ビルを去った円香は、真っ直ぐに自宅へと帰る。激しい感情が渦巻く心には蓋をし、努めて冷静に過ごす。

 もう円香の中で答えは出てしまっているから、あとはそのときまで、心を乱さないよう普段通りに振る舞うだけだ。


 その晩、円香は初めて自分から彰史を求めた。彰史との最後の想い出を作るために。

 円香は限界まで己の感覚を研ぎ澄ませ、彰史がくれるぬくもりを己が肌にしかと刻み付けた。
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