妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
 翌日。帰宅後の彰史に、円香は強い意志を持って切りだした。

「彰史さん、お話があります」
「わかった。聞こう」

 円香の真剣さが彰史にも伝わっているのか、彰史の表情も引き締まっている。

 二人はリビングのテーブルに向かい合わせに座り、真っ直ぐに見つめ合った。

「相川さんから引き抜きの話を聞きました」
「は? 相川と会ったのか?」
「はい。ここにいらして」
「はあ? ここに来たのか?」

 彰史は随分と驚いた表情をしている。円香が「はい」と答えると、彰史は何やらぶつぶつと呟き始める。

「なぜここが……まさか調べて……」
「えっと……彰史さん?」

 彰史らしからぬ独り言に円香が困惑気味に呼びかけると、彰史はすぐに我に返って円香と視線を合わせる。

「ああ、すまない。引き抜きというのは俺のことだな?」
「そうです」
「それなら心配しなくていい。その話は断っている」

 彰史は円香を安心させるように微笑んでくる。円香がアメリカ行きを心配していると思っているようだ。だが、その段階はもうすでに超えている。

「それも聞きました」
「ん? 聞いたって、それならどうしてそんな浮かない顔をしている? まだ他に何か言われたのか?」

 彰史は怪訝な表情をしている。だが、それも無理ないだろう。ここから先の話を彰史が予想できるとは思えない。

 円香は覚悟を決めるように、一度ゆっくりと瞬きをしてから、その口を開いた。
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