妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
「今回の引き抜きは、彰史さんにとってまたとないチャンスだと伺いました。断るべきではないと」
「いや、確かにチャンスではあるが、その話にこだわる必要はない。俺はこの先も自分の力でやっていくつもりだ」
「でも、今回のことは彰史さんの力が認められたってことですよね? これまでの努力が報われるってことですよね? だったら、そのチャンスを無駄にしてほしくありません」
「無駄にしているつもりはない。今の俺には他に大切なものがある。円香とここで暮らすことのほうが大切なんだ。だから、アメリカには行かない」
ああ、まったくなんと幸せで残酷なことであろうか。彰史が優しければ優しいほど、円香はつらい決意を固めてしまう。だって、彰史の幸せを強く願ってしまうのだから。
円香は声が震えそうになるのを必死に抑えて、今言わなければならなくて、一番言いたくないその言葉を彰史へ伝える。
「……だったら、別れてください」
「っ!? 何を言っている」
「彰史さんの邪魔をしたくありません。私のために、月花家のために我慢しているなら、別れてください」
「円香が邪魔なわけないだろ? 俺が日本に残る選択をしたのは俺のためだ。俺がここに、円香といたいんだ!」
嬉しくて、切なくて、涙が浮かびそうになる。
彰史が自分でそう口にする以上、それはまったくの嘘ではないのだろう。だが、物事というのは一方面から切り取っただけでは見えない真実がある。もっと様々な要素が複雑に絡み合っているものだ。
彰史がここにいたいと思ってくれている一方で、アメリカに渡りたいという思いがあることも確かだ。昨日の彰史と相川の会話でそれはわかっている。しかし、彰史はそのことをきっと口にはしないだろう。
だから、円香は涙を堪えて、彼の背中を押す言葉を紡ぐ。
「ありがとうございます。でも、私のせいでチャンスを棒に振る彰史さんなんて見たくありません。お義母さまのためにも、彰史さんはアメリカに行ってください。お願いします」
母親のことを口に出すのはずるいのかもしれない。でも、これなら彰史もわかってくれると思ったのだ。
そして、その考えは正しかったらしい。
彰史は一度大きなため息をついたあと、ついにその言葉を放つ。
「わかった。別れよう」
「いや、確かにチャンスではあるが、その話にこだわる必要はない。俺はこの先も自分の力でやっていくつもりだ」
「でも、今回のことは彰史さんの力が認められたってことですよね? これまでの努力が報われるってことですよね? だったら、そのチャンスを無駄にしてほしくありません」
「無駄にしているつもりはない。今の俺には他に大切なものがある。円香とここで暮らすことのほうが大切なんだ。だから、アメリカには行かない」
ああ、まったくなんと幸せで残酷なことであろうか。彰史が優しければ優しいほど、円香はつらい決意を固めてしまう。だって、彰史の幸せを強く願ってしまうのだから。
円香は声が震えそうになるのを必死に抑えて、今言わなければならなくて、一番言いたくないその言葉を彰史へ伝える。
「……だったら、別れてください」
「っ!? 何を言っている」
「彰史さんの邪魔をしたくありません。私のために、月花家のために我慢しているなら、別れてください」
「円香が邪魔なわけないだろ? 俺が日本に残る選択をしたのは俺のためだ。俺がここに、円香といたいんだ!」
嬉しくて、切なくて、涙が浮かびそうになる。
彰史が自分でそう口にする以上、それはまったくの嘘ではないのだろう。だが、物事というのは一方面から切り取っただけでは見えない真実がある。もっと様々な要素が複雑に絡み合っているものだ。
彰史がここにいたいと思ってくれている一方で、アメリカに渡りたいという思いがあることも確かだ。昨日の彰史と相川の会話でそれはわかっている。しかし、彰史はそのことをきっと口にはしないだろう。
だから、円香は涙を堪えて、彼の背中を押す言葉を紡ぐ。
「ありがとうございます。でも、私のせいでチャンスを棒に振る彰史さんなんて見たくありません。お義母さまのためにも、彰史さんはアメリカに行ってください。お願いします」
母親のことを口に出すのはずるいのかもしれない。でも、これなら彰史もわかってくれると思ったのだ。
そして、その考えは正しかったらしい。
彰史は一度大きなため息をついたあと、ついにその言葉を放つ。
「わかった。別れよう」