妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
 痛い。胸が痛い。心が痛い。でも、これは円香が望んだことだから、それを表に出してはいけない。円香は頑張ってその顔に笑みを浮かべ、「はい」と返す。

 これでもう後戻りはできない。彰史との愛しい日々は終わりを迎えるのだ。

 本当は第三の選択肢を示すという道もあった。けれど、その道も結局は彰史を邪魔することにほかならない。受験英語程度しか知らない円香が付いていったって、彰史の負担にしかならないだろう。

 二人の間に特別な想いがあれば、また違うのかもしれないが、それは円香側にしかない。彰史は家族というだけで優しくしてくれているに過ぎないのだ。

 彰史の壮絶な過去を聞き、彼が家族というものを大事にする背景はよくわかっている。だから、この関係を解消するのが一番いい。

 それが彰史を愛する円香にできる最大の愛情表現なのだから。
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