妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
「お願いします! 私も連れて行ってください! 何年先でもいいです。邪魔にならないように、ううん、役に立てるように頑張ります。だから、私も連れて行ってください。お願いします!」

 一度は諦めたその願いをはっきりと告げる。どうか受け入れてくれと、揺れる瞳で彰史を見つめる。

 しかし、彰史は静かに首を横に振った。

「いや、円香は連れて行かない」
「っ……ふっ……うっ……」

 言わせるだけ言わせておいて、結局は拒絶するだなんて残酷だ。円香は言葉を紡ぐこともできず涙を流す。少しも止まらないその涙を彰史が優しく拭う。

「円香は日本で待っていてくれ。一週間後に帰るから」

 言葉の意味をすぐには理解できなくて、円香は彰史と視線を合わせたまま、頭の中で必死に考える。

 帰るとは? 一週間とは? 

 そうして徐々にその意味をかみ砕いていくと、彰史がとてもおかしなことを言っていることに気づいて、円香は随分と気の抜けた声を漏らしてしまう。

「……へ? 一週間?」
「一週間後に帰ってくる。だから、待っていろ」
「え? ……でも、これからアメリカの会社に……」
「アメリカには行く。だが、KGFITの人間としてビジネスの話をしに行くだけだ。引き抜きの話は受けていない」
「受けて、ない?」

 何を言っているのだと問う視線を彰史に送れば、円香の問いに答えたのは彰史ではなく相川であった。
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