妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました～入れ替え婚!?～

　彼との出会いは円香が五歳の頃。休日に父に連れられ、父の友人宅へ訪れたときのことであった。


　円香が初めて訪れたその屋敷は、思わず感嘆の息を漏らしてしまうほど洗練されて美しいデザインの住宅で、外観はさることながら、内装までこだわり抜かれた芸術品であった。

　特に二階まで吹き抜けになったリビングには、自然光による独特の光と影の揺らぎが生まれていて、まるで自然と一体になったようなその空間に、円香は幼いながらに心を打たれていた。

「すごーい。ここキラキラしてきれい」

　リビングをぐるりと見回しながらこぼす円香に、その住宅の持ち主は優しく微笑む。

「円香ちゃんは見る目があるね」

　父と同じくらいの年齢の男性に褒められ、円香はちょっと得意げになって、にこにこと微笑む。

　まだまだ狭い世界しか知らない円香。だからわかっていなかったのだ。目の前の男性がどれほどすごい人物なのかを。