妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました～入れ替え婚!?～

「そうですか……」
「ああ。だが、あの女がそれをぶち壊した。本当にいい迷惑だ」

　彰史にとっては婚約破棄というより契約違反なのだろう。それを身内がしてしまったことは純粋に申し訳なく思い、円香は彰史へ向かって頭を下げた。

「妹が申し訳ありません」
「君が謝る必要はないだろ。そういうのは身を滅ぼすからやめておけ」

　まるで円香を気遣っているかのようなその言葉に円香は驚く。後半の言葉の意味もよく理解できなくて円香は「え？」と問い返すが、彰史はそれには答えなかった。

「あれとの婚約破棄は俺にとっては悪いばかりでもないんだ。何しろあれがぶち壊したのは俺との契約だけではないからな。おかげで俺はこうして君に結婚を申し込む立場を手に入れたんだ」

　彰史は楽しそうな笑みを浮かべている。円香の感情なんて微塵も考慮していないその言い方と表情に、また怒りが湧きそうになる。

　ビジネスとして考えるのは構わないが、人の気持ちを考えられないのはいかがなものだろうか。先程気遣ってくれたように感じたのもきっと気のせいだろう。

　こんな男と結婚したところで、円香の不幸に拍車がかかるだけだ。

　もうこれ以上この男と話したくはないと、円香は断りの言葉を口にしようとするが、円香がそれを口にするよりも早く、彰史が衝撃的な事実を告げてきた。