妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
 よく晴れた休日の午後。リビングテーブルの椅子に、円香は一人きりで座る。彰史は出かけていて、ここにはいない。

 テーブルの上には花瓶に生けられた花々。手前にあるラナンキュラスがその存在を主張している。それは玄関に飾っていたものであるが、円香が自身の目的のためにここへと移動させてきた。

 円香の視線は花と手元の白い紙とを交互に行き来する。円香が右手を動かすたびに、白い紙には少しずつ美しい花が浮かび上がる。使っているのは鉛筆だから色はついていない。濃淡によってその違いを表していく。

 静かな空間で、美しい物を捉えながら、スケッチブックと対峙する。なんと贅沢な時間だろうか。まさに至福の時である。

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