妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
 彰史に見られるのはなんだか審査されている感じがして落ち着かない。あまりじっくり見ずに、さらっと流してほしい。

 円香が一人そわそわとする中、彰史は一枚一枚じっくり眺めている。けれど、ある一枚に到達したところで彰史は突然笑いをこぼした。

「ふっ。これは何なんだ?」
「あ……」

 彰史が指さす先を確認したら、そこには円香がデザインしたキャラクターが描かれていた。

 それは、円香が大学生の頃に、友人が飼っていたチンチラをモチーフに描き起こしたキャラクターだ。当時はそれを気に入っていて、いろいろなところに落書きしていたのだ。

 デッサンしているものならともかく、その自作のキャラクターを見られるのはどうにも恥ずかしい。あまり注目しないでもらいたいものだが、彰史はパラパラとスケッチブックをめくって、そればかりを探しているようだ。

「至るところに紛れているな」
「自分で作ったお気に入りのイラストで……当時は癖になるほど描いていたので」
「自作なのか。こいつはネズミか?」
「チンチラです」
「あー、言われてみればそうだな。ふっ、愛嬌のあるキャラクターだな」

 彰史の声音はとても柔らかい。なんだか彰史が自分の絵を認めてくれたようで、円香はつい先ほどまで感じていた恥ずかしさはなくなり、小さな喜びで満たされた。

 彰史は円香の隣の椅子を引くと、そこに座って本格的に円香の絵を見はじめる。

 彰史のその様子をただ黙って見ているのはさすがに気まずくて、円香はデッサンの続きに戻った。
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