妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
「円香。少しいいか?」
「はい」

 これから眠ろうというところで彰史に声をかけられ、円香は彰史に向き合うように、自身のベッドの端に腰かけた。

「ここに円香が越してきて一ヶ月が経った。ここでの生活にも大分慣れただろ?」
「そうですね。彰史さんがいろいろと助けてくださるので、随分と馴染めました」
「そうか。だったら、俺はそろそろ夫婦としての関係も求めたい」
「夫婦としての関係?」
「セックスだよ」
「っ」

 何の覚悟もしていないところにいきなり爆弾を落とされて円香は息を飲む。

 夫婦となった以上はそれも当然含まれることは円香とてわかっていた。ちゃんと覚悟もしていた。

 けれど、彰史との生活は、蓋を開けてみれば、寝室は一緒でもベッドは別。彰史は一度もその話題を口にしないし、円香に触れることもしない。

 そんな状態が一ヶ月も続いたものだから、円香はてっきり彰史にはその気がないのだと思っていた。このタイミングで求められるだなんて、ちっとも予想していなかった。

 きっと初日に言われていたら、円香だって素直に受け取れたと思う。でも、このタイミングで言われて動揺しないのは無理だ。

 ドクドクと脈打つ心臓を抑え込むように胸に手を当てる円香。変な緊張で喉が渇いて、円香はごくりと唾を飲み込む。

 そんな円香の様子には構わず、彰史は淡々と話を続ける。
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