妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
「互いに不貞はしないと誓っている。風俗を利用するつもりもない。それを求められるのはお互いだけだ。だから、できれば俺は円香に相手をしてもらいたい」
「……はい」
「だが、無理強いをするつもりはない。円香が受け入れられないと言うなら、触れないでおこう」

 その選択肢があるとは思わず、円香は「え?」と声を漏らす。

 二人が婚姻関係にあって、相手がそれを求めているのなら、それに応じる選択しかないと円香は思っていた。それが当たり前のことだと。

 けれど、彰史は円香にもう一つの選択肢を提示してくれるらしい。

「夫婦間とて同意は必要だからな。もちろん円香が断ったとしても、それで他の誰かと関係を持ったりはしないから、そこは信頼してくれていい」
「彰史さん……ありがとうございます」
「うん。ただその場合は、君も同じだとわかってくれ。不貞を働くなら相応の対応をする。いいな?」

 円香はしっかりと頷く。

「それはもちろんです」

 円香がそれを絶対にするわけがない。それがどれだけ相手を傷つける行為であるかを円香は身をもって知っているのだ。生き方がわからなくなるほど苦しみ、ひどく塞ぎ込んだ。

 彰史のおかげでようやく元の自分を取り戻しつつあるが、今もなおその傷は完全に癒えていない。そんな円香が同じ裏切りをするはずがない。
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