妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
 円香の回答に、両親は心配そうな表情から安堵の表情に変えて、何度もうんうんと頷いている。

「彰史くん。ありがとう。円香のこんな笑顔久しぶりに見た」

 彰史に頭を下げる父の姿に、円香はいろいろな思いで胸がいっぱいになって、思わず「お父さん……」とこぼす。本当にひどく心配をかけていたようだ。

 隣の彰史はというと、とても柔らかい表情で微笑んでいる。両親は彰史のそんな表情を見るのが初めてだからか、かなり驚いているようだが、円香には見慣れた表情だ。

 彰史は愛想を振りまくタイプではないというだけで、自分の身内と認めた人間には心のこもった対応をしてくれる。そういう人だ。

「私は円香さんとただ普通に暮らしているだけですよ。特別なことは何もしていません。むしろ私が円香さんに助けてもらっています。本当によく家のことをしてくれるから、彼女には感謝しているんです」
「そうか。二人は上手くやれているんだな」

 円香と彰史はもう一度顔を見合わせ、微笑み合った。
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