妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
「実はな……麗香と朔也くんが結婚することになったんだ」
「っ……そう」

 なんとなく予想はついていたものの、直接聞かされると苦しいものがある。円香はテーブルの下で握る手に強く力を込めて、動揺しそうになる自分を抑えた。

「麗香が子供を産むと言って聞かなくてな。どれだけ強く言っても引かなかった。だから、結局中絶はしていないんだ」
「……うん」
「子供が生まれる以上はその子を育てる責任が生じる。あいつがシングルマザーで育てられるわけもないし、向こうも責任は取りたいと言っているから、二人が結婚するという話に落ち着いたんだ」
「そっか……」
「ただ、あいつらがしたことは許されることではないからな。祝福される結婚ではないと言い聞かせてある。籍は入れても、式を挙げさせるつもりはない。両家からの援助も一切なしだ。朔也くんももう跡取りからは外されているから、二人だけの力で生きてもらう」

 円香は思わず息を飲む。確かに親らは随分と怒っていたようだったが、想像していたよりも厳しい処分を与えていたことに円香は驚きを隠せない。

 甘えて暮らしてきた麗香が親の助けなく生きていくにはかなりの苦労を伴うことだろう。将来の道を断たれた朔也も言うまでもない。

 その苦労をもってして、自らの行いを反省してほしいという思いもあるにはあれど、円香は新しく生まれてくる命のことが心配でならなかった。麗香が母親というだけでも心配なのに、援助なしで本当にその子供は無事に育つのだろうかと。
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