妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
「……大丈夫、なの? 生まれてくる子が大変にならない?」
「円香……お前は優しすぎる。そんな心配はしなくていい」
「でも……」
「もしものときは父さんたちが何とかするから、円香は気にしなくていい」

 気にするなと言われても、円香の性格では無理な話だ。けれど、二人のことを全面サポートしてやってくれと言えるほど、円香もお人好しではない。相応の報いを受けてほしいというそんな気持ちだってある。

 結局、自分が何かを言えるわけでもないのだと気づき、円香は心配する気持ちは拭えないまま、しかたなく「わかった」と頷いた。

「ごめんな、円香。つらいことを思い出させて、本当にごめんな」
「ううん。言いづらいこと、言ってくれてありがとう」

 変なところから耳に入るより、両親から直接聞けてよかったのだと思う。あのときのように、何の前触れもなく、突然つらい事実を突きつけられれば、きっと円香はまた深い悲しみに暮れたことであろう。

 両親が円香を気遣いながら話してくれたから、円香は冷静に話を聞くことができた。そして何よりも隣に彰史がいてくれたからこそ、円香は耐えていられるのだと思う。

 円香のその思いを汲み取ってくれたかのように、彰史がそっと円香の背に手を添えてくる。服越しにじんわりと彰史のぬくもりが伝わってきて、円香の委縮しかけていた心が少し解れた。

「私には彰史さんがいるから大丈夫だよ。心配しないで」

 父も母も泣きそうな表情で頷くと、彰史に「円香をよろしくお願いします」と深く頭を下げていた。
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