妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
 ソファーでくつろぐ彰史に円香は真剣な表情をして対峙する。

「彰史さん。ご相談したいことがあるんです。今、お話ししてもいいですか?」
「ああ。大丈夫だ」

 ソファーをトントンと叩いて隣に座るよう促す彰史。円香はそれに従って、ソファーへと腰を下ろすと真剣な顔つきのまま、彰史を真っ直ぐに見据えた。

「私、もっと前を向いてみようと思うんです。新しい道を生きてみようかなって」
「新しい道……どんな?」

 大きな成功を収めている彰史に、自分の小さな夢を語るのは少しだけ勇気がいる。それでも彰史が円香を馬鹿にしたりしないと円香はよくわかっているから、それを告げることに抵抗感はない。

「小さなことでいいから、何か絵に関することがしたいんです」
「あー、その道に行きたいのか」
「はい。本格的に就職したいとまでは考えていません。自分の作品をフリーマーケットに出すとかそのくらいの小さなことでいいんです。家事の合間にできる範囲でいいから、何かやってみたくて」

 円香の主軸はあくまでも主婦である。そこを変えるつもりはない。彰史を支える暮らしは円香にとって幸せを感じられるものだ。

 けれど、円香の好きなことをしてもいいと彰史が言ってくれるのなら、円香はその小さな夢にチャレンジしてみたかった。
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