妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
「そうか。相談というのはそれをしてもいいかってことか?」
「それもありますが、その前にできればイラストの専門学校に通いたいと思っているんです。デジタルでの描き方を学びたくて。平日はそれなりに時間が拘束されてしまいますけど、家のことは変わらずにちゃんとします。だから、学校に行くことを許可してくれませんか?」
「なるほど、そういうことか。もちろん構わない。頑張れよ」

 彰史が反対するとは思っていなかったが、あまりにもあっさり認められると聞き返さずにはいられない。

「本当に、いいんですか?」
「円香の好きに生きていいと以前も言っただろ? 通いたいなら通えばいい。俺は反対しない。円香のその新しい道とやらを応援するよ」
「ありがとうございます! 本当にありがとうございます、彰史さん」
「ああ。思う存分好きに生きろ。もしも両立が難しいようなら、家事代行頼んでやるから、そのときは教えてくれ」

 この男はどれだけ円香を驚かせれば気が済むのだろうか。もはや冷酷無慈悲という噂の影も形もない。円香にプロポーズをしてきたときと今とではまったくの別人に見える。

「とんでもないです。そんな我儘は言えません。家のことはちゃんとしますから、大丈夫です」
「その心意気はありがたいが、無理をする必要はない。どちらも中途半端になったら意味がないだろ? うちは金には困ってないからな。家事代行を頼むくらい何でもない」
「でも、家事は私の役割ですから」
「確かにそういう約束だが、それは君を縛るための約束ではない。あれは俺に寄りかかるだけの生き方はやめてほしいという意味で言っただけだ。円香がそういう人ではないともう十分にわかっている。だから、円香が新しい夢を追いたいというなら、俺は家族として協力するよ」

 『家族として』と言ってくれるのがとても嬉しい。心がぽかぽかと温かくなる。彰史が自分の家族でいてくれるだなんて、なんと心強いことだろう。

「彰史さん……ありがとうございます」
「ああ。学費も必要なら出すから言ってくれ」
「ええ!? それは甘やかしすぎです」
「そうか? 円香は専業主婦をしてくれているんだから、俺が出すのはおかしなことでもないだろ」

 本当にこの男の優しさが計り知れない。彰史にとって何のメリットもないだろうに、どうしてここまで円香によくしてくれるのか。円香には彰史の思考がさっぱり理解できない。
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