妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
「……どうしてそんなに優しくしてくれるんですか?」
「優しい、ね。冷血人間にはもっと冷遇されるとでも思っていたか?」
「っ! いえ、そんなことは……」

 想定していなかった問いに円香は慌てて否定するも、今はともかく以前はそう思っていたから、最後まで言いきることができない。

 結婚する前は噂を鵜呑みにして彰史のことを冷たい人だと決めつけていた。親切心なんて持ち合わせていない人だと。

 でも、実際に一緒に暮らしてみると、彰史は冷たい人なんかじゃなくて、思いやりに溢れた人だった。円香の気持ちに寄り添ってくれる人だった。

 きっと円香が結婚を決めたときのあの直感が正しいのだ。彰史からははっきりとした誠実さを感じられる。

 円香は彰史を色眼鏡で見ていたことを今さらながら恥じた。

「……すみません」
「別にいい。人からどう思われているかはよくわかっている。間違いだとも思わない」

 円香が知っているくらいなのだ。彼の耳にも当然その噂は届いているのだろう。きっと円香がそう思っていたことにも最初から気づいている。

 円香は都合がいいとは思いながらも、今はその噂を否定したかった。
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