「役立たず」と死の森に追放された私、最強竜騎士に拾われる~溺愛されて聖女の力が開花しました~
 そして一番きれいに咲いている場所を見つけ、花を傷つけないよう気をつけながら卵が入ったカゴを置く。

 黄色やピンク、白や水色といった花の中に、ごろんと大きな鈍色の卵があるのはどうにも奇妙な光景だったが、エレオノールにとっては見慣れた景色だ。

「早く出ておいで。卵の中じゃ、この香りまでは感じられないでしょ?」

 エレオノールは卵のそばに座り、少しざらついたその表面を撫でて言う。

 春の風が吹き抜けると、ふわりと甘い花の香りがエレオノールの鼻孔をくすぐった。

 花びらを散らした極彩色の世界の中で、育て親が『ラス』と呼ぶ声が脳裏によみがえる。

「あなたの名前も考えておきましょうね」

< 25 / 530 >

この作品をシェア

pagetop