「役立たず」と死の森に追放された私、最強竜騎士に拾われる~溺愛されて聖女の力が開花しました~
 立ち尽くしたままぼんやりとするエレオノールにジークハルトが声をかける。

「大丈夫か?」

「あ……はい」

 見つめてくる紫の瞳を、相変わらず美しいと感じる。

 しかしもう、エレオノールはジークハルトの瞳を素直に賞賛できない。

(だって私は、特別になれない)

 既に亡くなったという想い人の存在だけでもつらいのに、そもそも生きる世界が違う。

 耐えがたい痛みを胸に感じた時、エレオノールは気づいてしまった。

(いつから私は、ジークハルトさんの特別になりたかったんだろう……?)

「人混みに慣れなくて酔ったか? 無理はしなくていい。外の空気でも吸いに行こうか」

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